日本のエネルギー基本計画:第7次エネルギー基本計画を分かりやすく解説!!【安全性・安定供給・経済効率性・環境適合性を中心にした未来展望】

1.はじめに

東日本大震災から十数年、いま日本のエネルギー政策は再び大きく転換しようとしています。最近閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、これまでの反省と教訓を踏まえ、2040年を見据えた大きな方向性を示したもの。そこで、「私たちの暮らし」はどう変わり、エネルギーの未来はどうなっていくのか? 分かりやすくポイントをまとめてみました。


2.日本のエネルギー政策の基盤:「S+3E」原則とは

エネルギー政策のキーワードとしてよく登場するのがS+3E

  • S(Safety):安全性
  • E(Energy Security):安定供給
  • E(Economic Efficiency):経済効率性
  • E(Environment):環境適合性

原子力発電所事故を経験した日本だからこそ、安全を大前提にしながらも、エネルギーが途絶えず、生活・産業をしっかり支え、環境にも優しい形を追求する―これが政府の大きな基本姿勢です。

安全性(Safety)

安全性は、エネルギー政策の土台です。特に2011年の福島第一原子力発電所事故の経験から、原子力エネルギーを利用する際には最優先事項として安全性が確保されるべきです。

また、自然災害やサイバー攻撃といったリスクへの備えが求められます。災害が多発する日本では、地震や台風に強いインフラの構築が重要であり、サイバーリスクの増加に対応したエネルギーシステムの強靭化も急務です。

エネルギー安定供給(Energy Security)

日本のエネルギー自給率は約12.6%と、G7諸国の中で最低レベルにあります。この状況を改善するため、再生可能エネルギーや原子力を活用し、自給率向上に向けた取り組みが行われています。

また、特定のエネルギー源への依存を避けるため、多様な調達先を確保することが政策の柱となっています。特にロシアや中東情勢の影響を受けやすい石油・天然ガスについては、代替供給源の確保が急務です。

経済効率性(Economic Efficiency)

エネルギー価格が国際競争力に直結する日本において、経済効率性は重要な指標です。脱炭素化を進めるにあたり、コストパフォーマンスが高い技術を優先的に導入する必要があります。

また、エネルギー消費が多い産業への価格影響を最小限に抑えることが求められ、競争力を維持するための政府支援が重要な役割を果たします。

環境適合性(Environment)

温室効果ガス削減を目指す上で、エネルギー起源のCO2排出を減少させることが日本の使命です。2030年までに46%削減、2050年のカーボンニュートラル実現という目標が掲げられており、再生可能エネルギーの活用拡大がその中核を担っています。


3.2040年に向けた政策の方向性

今回の計画で注目されるのが「2040年のエネルギーミックス」という考え方です。2050年カーボンニュートラル(CO₂実質ゼロ)を目指す道のりで、2030年だけでなく10年先の2040年にも具体的な“目標像”を置くことで、企業や自治体、個人が先を見通しやすくしようという狙いがあります。

  • 再生可能エネルギー:太陽光や風力、水力など合わせて「4~5割」
  • 原子力:福島事故を踏まえつつも、約「2割」程度を確保
  • 火力(化石燃料):CO₂をなるべく減らしながら「3~4割」

再生エネの割合が大きく増えるのはもちろんですが、一方で、いきなり火力をゼロにするのは難しい。そのため、CCUS(CO₂回収・貯留技術)や水素・アンモニア燃料など、「火力をクリーン化する」取り組みを同時並行で進めていくのが特徴です。

再生可能エネルギーの拡大

「やっぱり再生エネがいちばんクリーンなのでは?」という声は世界的にも強まっています。第7次計画でも、「再生エネルギーを主力電源に」という流れは大きな柱。特に太陽光では、住宅やビルでのパネル設置を進めたり、次世代型のペロブスカイト太陽電池の実用化を急いだりして、導入コストを下げながら爆発的に広げようとしています。

ただし、再エネはコストや立地条件、天候による発電量の変動など課題もまだまだ山積み。送電網の強化や蓄電池、地域の合意形成など、「地道だけど欠かせない」整備が必須となります。

原子力の活用と再評価

福島第一原発事故後、「可能な限り依存度を下げる」と言われてきた原子力。けれども、2040年の電源で約2割という見通しを示した今回の計画は、ある意味、原子力を「やめない」という姿勢が明確になったと言えます。

安全性を大前提に、停止中の原発を順次再稼働し、廃炉が決まった炉については新型炉への建て替えも検討。もちろん地元とのコミュニケーションやバックエンド(使用済み燃料の処理など)の課題は山ほどありますが、「安定供給」と「脱炭素」の両輪を支える一つの柱として位置づけられています。

水素社会の実現

いまの日本で電力の7割を担っている火力発電。これを一気に無くすのは現実的には難しいですが、CO₂を減らすには何か手を打たなければなりません。そこで注目されるのが、

  • 水素・アンモニア発電:混焼や専焼によって化石燃料の排出を抑える
  • CCUS:出てしまったCO₂を地中などに回収・貯留する
  • 合成燃料:グリーン電力で作った水素とCO₂を化学反応させる

などの技術です。
これらが実現できれば、火力発電を「クリーン」な形に変えられる可能性が開けますが、まだコストや技術開発のハードルが高いのも事実。2040年までにどこまで進むか――まさにチャレンジの真っ最中です。


4.国際情勢の変化と日本の対応

地政学的リスクへの備え

ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の変化などを受け、「エネルギー安全保障」の重要性が一段と増しています。日本は化石燃料の大半を海外に依存しており、国際価格の変動に弱いという課題が長年の懸念でした。

そこで第7次計画では、レアメタルなどの重要鉱物はリサイクルや代替素材も視野に入れるなど、多面的なアプローチを示しています。
また、脱炭素技術は世界的にも「伸びる市場」です。日本企業がここで先行すれば、海外への技術輸出や新たなビジネスチャンスが広がると期待されています。

気候変動対策と産業政策の統合

欧米諸国では、気候変動対策と産業政策が一体化されており、日本でもこのアプローチが進められています。グリーントランスフォーメーション(GX)を通じて、エネルギー政策と経済成長を両立させる取り組みが進行中です。


5.福島復興と原子力政策

廃炉作業の進展

福島第一原子力発電所の廃炉作業は、現在も進行中です。燃料デブリの取り出しや汚染水の処理といった課題が存在しますが、これらに対して国内外の技術を活用した取り組みが行われています。

また、廃炉作業を通じて得られる技術や知見は、他国の原子力施設にも応用可能であり、国際的な安全基準の強化に寄与しています。

福島新エネ社会構想

福島では、再生可能エネルギーの導入拡大が進められており、木質バイオマスや風力発電などのプロジェクトが展開されています。これらは地域経済の活性化にも寄与しており、持続可能な社会の実現を目指しています。


6.結論

日本のエネルギー基本計画は、安全性・安定供給・経済効率性・環境適合性という「S+3E」の原則を軸に、2040年、さらには2050年のカーボンニュートラルを目指しています。

エネルギー政策の成功は、国民生活の質を向上させるだけでなく、日本の国際競争力を高めるためにも欠かせない要素です。当社では、省エネ技術や補助金活用についてのご相談を承っております。光熱費削減や脱炭素経営に向けたサポートが必要な際は、ぜひお問い合わせください。