今さら聞けない脱炭素先行地域とは?【北海道の脱炭素先行地域の事例についても解説】

脱炭素先行地域について

脱炭素先行地域とは、2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、家庭や業務などの民生部門の電力消費に伴うCO2排出量を実質ゼロにする地域です。また、運輸部門や熱利用などを含む他の温室効果ガスの排出削減も、2030年度の国の目標に合わせて地域特性に応じた削減を実現し、「実行の脱炭素ドミノ」のモデルとなる地域です。

「地域脱炭素ロードマップ」では、地方自治体や地元企業、金融機関が中心となり、環境省をはじめとする国の積極的な支援を受けながら、2025年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域で地域特性に応じた先行的な取り組みを行い、2030年度までにそれを実行することを目指しています。これにより、農山漁村、離島、都市部など多様な地域で地域課題を解決しつつ、住民の生活の質を向上させながら脱炭素化を進める方向性を示しています。

民生部門のCO2排出量は、2030年までに46%削減を目指しており、特に家庭部門で66%、業務その他部門で50%の削減が求められています。民生部門の電力は、再生可能エネルギーなど現在の技術でCO2排出実質ゼロを達成することが可能であるため、2030年までに民生部門の電力消費に伴うCO2排出量の実質ゼロを実現する予定です。

北海道の事例

北海道は、再生可能エネルギーを活用した地域脱炭素の先行地域として注目されています。以下に、具体的な取り組み事例を紹介します。

脱炭素先行地域

奥尻町の取り組み

サスティナブル・アイランド奥尻

奥尻町では、再生可能エネルギーの導入を通じて島全域の脱炭素化を進めています。主な取り組みとして以下の点が挙げられます:

  1. EV充電スタンドとEVデマンドバスの導入
    • 役場庁舎等へのEV充電スタンドの整備
    • 高齢者や観光客向けにグリーンスローモビリティ(10台)の導入
  2. 木質バイオマスの利用
    • 公共施設へ木質チップボイラーを導入し、木質ペレット製造を拡大
    • 木質バイオマスサプライチェーンの構築
  3. 地熱バイナリー発電と太陽光発電
    • 医療・社会福祉施設や園芸栽培施設等への地熱バイナリー発電排湯の利用
    • 既存の水力発電、地熱発電、太陽光発電、木質バイオマスなど多様な再生可能エネルギーの活用

これらの取り組みにより、奥尻町は「サスティナブル・アイランド」としての実現を目指しています​​。

環境省HPより引用

上士幌町の取り組み

未来へつなぐ持続可能なまちづくり – ゼロカーボン上士幌の実現とスマートタウン構築を目指して

上士幌町では、地域の特性を活かし、以下のような取り組みを進めています:

  1. 全公用車両のEV化
    • 全公用車両のEV、PHEV更新および公用電動自転車の導入
    • 急速充電設備を搭載したEVステーションの整備
  2. 農村部市街地送迎バスの効率化
    • 定時・定路線運行からデマンド運行への変更
  3. バイオガス発電の活用
    • 酪農施設から発生する家畜ふん尿を利用したバイオガス発電
    • 再生可能エネルギーの地産地消を推進

これらの取り組みにより、上士幌町は持続可能なスマートタウンの構築を目指しています​​。

環境省HPより引用

鹿追町の取り組み

多様なエネルギーの循環とレジリエンス強化による地方創生モデル「MIRAI COUNTRY」

鹿追町では、以下のような取り組みを行っています:

  1. 中鹿追バイオガスプラントの活用
    • バイオガスプラントで製造した水素を活用し、水素燃料電池を利用
    • 公用車やバスのFCEV、EV化と災害時の電力供給の確保
  2. 再エネ電力の地産地消
    • 地域新電力を介して町内の再エネ由来電気を供給
    • 公共施設に再生可能エネルギーを導入し、非常時のレジリエンスを強化
  3. 太陽光発電と蓄電池の導入
    • 公共施設群に太陽光発電設備や蓄電池を導入し、エネルギーの安定供給を確保

これらの取り組みにより、鹿追町は地方創生と脱炭素化の両立を目指しています

環境省HPより引用

札幌市の取り組み

ゼロカーボン都市「環境首都・SAPP‿RO」

札幌市は、積雪寒冷地という地域特性を活かし、大都市としての脱炭素化を推進しています。主な取り組みは以下の通りです:

  1. 地域熱供給ネットワーク
    • 札幌都心地域のビル等でのZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化
    • 太陽光発電や木質バイオマスを活用した熱供給
  2. 再エネ電力の導入
    • 市営地下鉄への再生可能エネルギー電力導入
    • 下水熱を利用したロードヒーティングの導入
  3. 水素社会の実現
    • 水素ステーションの整備
    • 再エネ由来の水素を利用したFC(燃料電池)トラックの運用実証
    • 2030年冬季オリンピック・パラリンピックの開催に向けたZEV(ゼロ・エミッション車)の活用

これらの取り組みを通じて、札幌市は持続可能な都市モデルの構築を目指しています​​。

環境省HPより引用

石狩市の取り組み

再エネの地産地活による脱炭素化

石狩市では、再生可能エネルギーを最大限活用し、地域の脱炭素化と経済活性化を図っています。主な取り組みは以下の通りです:

  1. 太陽光発電と木質バイオマス発電
    • 石狩湾新港地域内での太陽光発電設備の導入
    • 木質バイオマス発電設備を活用した特定送配電事業
  2. データセンターへの再エネ電力供給
    • 地域に集積するデータセンター群への再エネ電力供給
    • マイクログリッドの構築によるCO2排出実質ゼロの実現
  3. 公共施設群の脱炭素化
    • 公共施設における再生可能エネルギー設備の導入
    • 大型蓄電池や水素製造の導入による地域調整力の確保

これらの取り組みを通じて、石狩市は再エネポテンシャルを地域の強みとして活かし、更なる産業集積を目指しています​​。

環境省HPより引用

北海道の各地域は、それぞれの特性を活かしながら、再生可能エネルギーの導入と地域の脱炭素化に取り組んでいます。これにより、地域の魅力と質の向上を図り、持続可能な社会の実現を目指しています。

まとめ

脱炭素先行地域は、地域の特性や資源を最大限に活用し、脱炭素化と地域課題の解決を同時に進めるモデル地域です。これらの地域での成功事例は、他の地域への展開や普及を目指し、日本全体のカーボンニュートラル達成に向けた道筋を示しています。