「出力制御」とは？ 2024年以降の見通しと北海道における太陽光発電所の対応策

近年、再生可能エネルギーの導入が急速に進む中で、「出力制御」という言葉を耳にすることが多くなっています。特に、北海道のように太陽光発電の普及が進んでいる地域では、この出力制御が大きな課題となりつつあります。

「出力制御って一体何？」
「なぜ必要なのか？」
「今後の対策は？」

この記事では、2024年の最新情報に基づき、北海道における出力制御の現状とその対応策について詳しく解説します。わかりやすく用語を説明しながら、どのようにこの課題に対処すべきかを見ていきます。

「出力制御」とは？

「出力制御」とは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる発電量が、電力の消費量（需要）を上回る場合に、電力の供給を一時的に抑える措置です。特に、北海道のように再エネ導入が進んでいる地域では、この出力制御がしばしば発生します。

引用元：https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/047_s01_01.pdf

なぜ出力制御が必要なのか？

電力の供給と需要は常にバランスを保つ必要があります。例えば、発電量が消費量を大きく上回ると、電力網に過負荷がかかり、停電やシステム障害の原因となる可能性があります。このような事態を避けるために、発電を一時的に抑える「出力制御」が行われます。

具体的には、電力会社が太陽光発電事業者に対して、発電量を減らすよう指示を出します。これにより、電力の供給過剰を防ぎ、電力の安定供給を確保しています。

出力制御が必要な理由

再生可能エネルギーの特性

太陽光発電や風力発電は、気象条件に大きく左右されます。晴天の日や風が強い日には発電量が急増しますが、これは消費電力が低い時期や時間帯には過剰な電力供給につながります。この余剰電力を抑制し、電力の「需給バランス」を維持するために出力制御が行われるのです。

大規模停電のリスクを防ぐ

「需給バランス」を保つことは、電力供給の安定にとって非常に重要です。このバランスが崩れると、電圧や周波数が乱れ、電力システムに不具合が発生する可能性があります。最悪の場合、大規模停電が引き起こされることもあります。そのため、出力制御は停電リスクを回避するための重要な措置です。

北海道における出力制御の現状

北海道電力エリアでは、太陽光発電の導入が進む一方、発電量と電力消費量のアンバランスが問題となってきました。北海道は他の地域に比べて寒冷な気候のため、特に春や秋には冷暖房の需要が少なく、電力需要が低下します。そのため、供給過剰のリスクが高まり、出力制御が行われやすくなっています。

2022年には初めて再生可能エネルギーによる発電量が最小電力需要を上回り、出力制御が実施されました。2024年度も、出力制御の増加が見込まれています。

2024年度の出力制御量の見通し

資源エネルギー庁による2024年の見通しでは、北海道における出力制御量は2023年度と比較して約1.1倍に増加すると予測されています。この増加は、再生可能エネルギーの導入拡大が一因です。特に春や秋には、電力需要が減少するため、出力制御が多くなることが予想されます。

出力制御が増加している理由

出力制御が増加する主な理由は、以下の3つです。

1. 再生可能エネルギーの導入量の増加

北海道では、再生可能エネルギー、特に太陽光発電の導入が急速に進んでいます。政府の「カーボンニュートラル宣言」により、再生可能エネルギーの拡大が推進され、太陽光発電設備が増加しました。しかし、これにより電力供給が需要を上回ることが多くなり、出力制御が必要となっています。

2. 送電ネットワークの限界

北海道は本州との地理的な隔たりにより、送電網が限定されています。余剰電力を本州に送りたい場合、送電容量が限られているため、余分な電力が北海道内に留まり、出力制御が行われることになります。

3. 電力需要の変動

北海道は冬季に電力需要が増加しますが、春や秋には冷暖房の使用が少なくなるため、電力需要が大幅に減少します。この時期には発電量が消費量を大きく上回るため、出力制御が必要となることが多くなります。

出力制御への対策

1. 蓄電池の導入

蓄電池を活用することで、余剰な電力を蓄え、後で必要なときに使用することができます。これにより、出力制御による電力の無駄を減らし、発電事業者は売電収入を維持することができます。

2. オンライン化の推進

太陽光発電所を「オンライン化」することで、出力制御を遠隔で柔軟に行うことが可能になります。オンライン化されている発電所では、電力会社からの指示をリアルタイムで受け取り、必要な時間だけ発電を抑制できます。これにより、オフラインの発電所に比べて、出力制御による影響を軽減することができます。

オンライン化とは？
オンライン化は、発電所が遠隔操作できるようにすることです。オンライン化されると、電力会社が必要なときにリアルタイムで発電量を制御でき、無駄な出力制御を減らすことができます。

出力制御に関する補償ルール

北海道電力エリアでは、出力制御に関する補償ルールとして「旧ルール（30日ルール）」が適用されています。このルールでは、出力制御が年間30日を超えた場合、31日目以降の売電収入が補償されます。ただし、発電所の運転開始時期や条件によって補償内容が異なるため、発電事業者は自身の発電所がどのルールに該当するかを確認しておく必要があります。