世界の方向性が見える【COP28の結果報告】

国連の気候変動に関する会議【COP28】の概要

パリ協定では、世界中の約200カ国が協力して地球温暖化を防ぐための炭素排出削減に取り組むことを約束しました。この取り組みと新しい規則について議論するため、国連の気候変動に関する会議(COP28)が2023年11月30日から12月13日までアラブ首長国連邦のドバイで開催されました。COP28では、最初に気候変動による被害を補償するための基金を立ち上げることで合意し、良いスタートを切りましたが、その後の交渉は困難を極め、予定よりも長くかかって合意に至りました。最終的には、化石燃料の段階的な廃止には明確に言及されませんでしたが、2050年までにネットゼロ(炭素排出の実質的なゼロ)を目指すため、エネルギーシステムを化石燃料から他の形態へと移行することに合意しました。

今回の会議の焦点

今回の会議で重要な焦点となったのは、「グローバル・ストックテイク(GST)」の実施です。GSTは、パリ協定で設定された目標に向けた世界全体の進捗状況を評価する仕組みです。パリ協定は2015年のCOP21で採択され、目標として「産業革命以前と比べて世界の平均気温上昇を2℃より大きくしないよう努め、さらには1.5℃に抑えるよう努力する」と定められました。

GSTは、この目標達成に向けての全世界の進捗を評価し、5年ごとに実施される予定です。今回、パリ協定が発効してから初めてGSTが実施されたことになります。

GSTの目的は、パリ協定で掲げられた目標に対する進捗を評価するだけでなく、各国が取るべき行動に対して示唆やガイダンスを提供することにあります。これにより、各国は自国の気候変動対策を再評価し、必要に応じて行動計画を強化することが期待されています。

化石燃料について

COP28、世界の主要な産油国であるアラブ首長国連邦で開催されたこの会議では、化石燃料の廃止について、パリ協定史上初めての合意が焦点となりました。

交渉は難航し、会期を一日延長しましたが、最終的には化石燃料を名指しして、エネルギーシステムを変革していくことに合意。この合意には、「2050年までにネット・ゼロ(温暖化ガスの排出実質ゼロ)を達成するため、公正かつ秩序だって衡平な方法で、エネルギーシステムにおいて化石燃料を転換し、この重要な10年間で行動を加速する」という文言が含まれています。

合意文書は交渉の末に作成されたため、少々複雑な表現となっていますが、要するに2050年までに脱化石燃料を実現し、特に2030年までの10年間で気温上昇を1.5度に抑えるための行動を加速するということです。

この最終合意に至るまでには、議長案が二回提出されました。当初の案には「化石燃料の段階的廃止」という明確な表現が含まれていましたが、2回目の案ではこの表現が削除され、より弱い内容になりました。これに対して欧州連合、小島嶼国連合、先進的なラテンアメリカ諸国連合が強く反発しました。

最終的に、翌日の朝に出された最終案では、2050年までに化石燃料から転換することが盛り込まれ、これが最終合意となりました。

2021年のイギリスCOP26では石炭火力の段階的削減に合意され、昨年のエジプトCOP27ではそれ以上の進展はありませんでしたが、今回のCOP28では、化石燃料の削減に名指しで合意したことが歴史的な転換点です。

COP28の合意では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを2030年までに現状の3倍に拡大する目標や、エネルギー効率の改善を倍増させることも明記されました。これにより、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が加速されることが期待されています。

初めは、アラブ首長国連邦がホスト国であることから、脱化石燃料への合意が疑問視されていましたが、最終的には議長のアル・ジャベールがこのエネルギー転換に関する合意を大きな成果として誇りました。

今後の展開

2024年のCOP29がアゼルバイジャンで開催されることが正式決定した。開催時期は2024年11月11~22日の予定です。

今後、各国の脱炭素の動きは、さらに進むことが予想されます。