はじめに
2050年カーボンニュートラル実現に向け、日本政府は企業の脱炭素投資を支援するため、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(以下、CN税制)」を導入しています。
特に中小企業にとって、CO2排出削減と同時に税務メリットも得られる非常に有効な制度です。本記事では、制度の内容から申請の流れ、対象設備や注意点まで、最新版(令和7年度)に基づいてわかりやすく解説します。
この制度で何ができる?
CN税制とは、「炭素生産性の向上」を伴う設備投資を行った企業が、税額控除または特別償却を受けられる制度です。
▼ 適用対象
- 国内において事業を営む法人・個人事業主
- 中小企業を含むすべての事業者
- 経済産業大臣など主務大臣から「事業適応計画」の認定を受けた事業者
優遇措置の内容
区分 | 炭素生産性の向上率 | 税額控除 | 特別償却 |
---|---|---|---|
中小企業者等 | 17%以上 | 14% | 50% |
中小企業者等 | 10%以上 | 10% | 50% |
それ以外 | 20%以上 | 10% | 50% |
それ以外 | 15%以上 | 5% | 50% |
※税額控除の上限は、法人税額の20%まで(DX税制との合算)
炭素生産性とは?
「炭素生産性」は、以下の計算式で算出されます:
炭素生産性 = 付加価値額 ÷ CO2排出量
(付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費)
- 対象設備の導入前後で、炭素生産性が1%以上向上していることが最低条件です。
対象設備の条件と注意点
▼ 対象設備の主な分類
- 機械装置
- 器具備品
- 建物附属設備
- 構築物
- 鉄道車両(国交省認定)
▼ 対象外の例
- 一般的なLED照明
- 快適性目的のエアコン
- オペレーティングリース
- 修繕目的の工事
- 所有権のないPPA方式の太陽光設備
リース契約は使える?
リース形態 | 対象可否 | 特記事項 |
所有権移転型ファイナンスリース | ○ | 税額控除・償却両方OK |
移転外ファイナンスリース | △ | 税額控除のみ対象 |
オペレーティングリース | × | 対象外 |
中小企業向けの特例
中小企業者等(※中小企業基本法に基づく)は、
- 「事業所単位」での申請が可能(全体のエネルギー消費が3,000kl未満でも可)
- 地方公共団体や商工会議所との連携による支援あり(省エネ診断等)
税制の適用フロー(申請の流れ)
- 【準備】事前相談、設備選定、診断実施(任意)
- 【申請】経済産業大臣に「事業適応計画」を提出
- 【認定】認定通知を受領(計画認定期限:2026年3月31日まで)
- 【投資実施】認定後3年以内に供用開始
- 【税務申告】税額控除または特別償却を申告時に適用
- 【報告】毎年度、実施状況報告書を提出
よくある質問(FAQ)
Q. すでに導入済の設備は対象になりますか? → いいえ。2024年4月1日以降に「取得の意思決定」がされた設備が対象です。
Q. 設備投資に補助金を受けた場合は? → 補助金との併用はできません(例外あり:固定資産税の軽減制度とは併用可能)
Q. 設備導入前に何から始めればいい? → まずは「炭素生産性の算出」と「事業計画案の作成」から始めましょう。
まとめ:カーボンと経費の“ダブル削減”へ
CN税制は、企業のカーボンニュートラルへの取り組みを“税制”で応援する強力な制度です。 中小企業の皆さまも、積極的に導入を検討する価値があります。
補助金との違いは「利益を出している企業ほど効果が高い」点です。設備選定や計算に不安がある場合は、エネルギー管理士などの専門家にぜひご相談ください!