エアコンの省エネ性能を評価する際に重要となる指標は、主に「COP(Coefficient of Performance)」と「APF(Annual Performance Factor)」です。COPは一定条件下での瞬間的なエネルギー効率を示す一方で、APFは年間を通しての実際の使用状況を反映した省エネ性能を評価する指標です。ここでは、COPとAPFの違いに焦点を当てつつ、特に業務用エアコンにおけるAPFの詳細を解説します。
目次
- COPとAPFの基本的な違い
- APFの導入と背景
- APFの算出方法
- APF2015の規格と評価ポイント
- 業務用エアコンにおけるAPFの適用範囲と対象機種
- 省エネ法とAPFの役割
- COPとAPFの選び方と実践的な省エネ対策
- まとめ:APFを活用した省エネへの道
1. COPとAPFの基本的な違い
COPは、空調機器が一定の温度条件下でどれだけ効率よくエネルギーを消費できるかを表す指標です。たとえば、冷房時に外気温が35℃、暖房時に7℃という条件で、どのくらいの能力(kW)を発揮できるかを基に計算されます。しかし、実際の使用環境では温度は一定ではなく、季節や日々の気温により変動します。このため、COPは実際のエネルギー効率を正確に反映できないことがあります。
具体的には、1kWの電力を使ってどれだけの冷房・暖房能力を引き出せるかを示します。例えば、COP=3であれば、消費した電力に対して3倍の空調効果が得られることを意味します。一般的に、COPの値が大きければ大きいほど、より効率的にエネルギーを使っていると言えます。
・ボイラーのCOP
ボイラーは燃料や電気を使って直接水や空気を加熱します。そのため、COPは1未満であり、燃料で得た熱以上の効果を発揮することはありません。ボイラーは高温対応が可能であり、特定の用途では適しているものの、一般的には省エネ性能が低いとされています。
・ガスヒートポンプエアコン
GHPはガスを燃料とし、エンジンを駆動する空調方式で、COPは1.2~1.5程度です。特に冬場の運転効率が安定しているため、寒冷地での使用に強みを持ちます。
・電気ヒートポンプエアコン
電気ヒートポンプ(EHP)は、最も普及している空調方式で、代替フロンを使った冷暖房方式です。現在、多くの機種がCOP3.5以上、場合によっては6以上の高効率を誇ります。これにより、省エネ性能の高い空調設備として広く利用されています。
これに対してAPF(通年エネルギー消費効率)は、1年間の様々な運転条件に基づき、より現実的なエネルギー効率を評価するための指標です。APFは冷房と暖房の両方を通じた年間の消費電力量と空調能力を基に算出され、実際の省エネ性能をより正確に把握できます。
2. APFの導入と背景
APFは、2006年10月に業務用エアコンの省エネ性能を評価するために導入されました。COPが定格条件に基づく1点の効率を示すのに対し、APFは使用実態に近い複数の温度条件を考慮します。特に、近年のエネルギー効率への関心の高まりにより、日本工業規格(JIS)が改正され、APFの基準が導入されました。
当初は「APF2006」として5つの評価点でエネルギー効率を評価していましたが、2015年3月には「JIS B 8616:2015」の改正により、8つの評価点に基づく「APF2015」が導入されました。これにより、より精密で実際の使用状況に適した省エネ評価が可能になりました。
3. APFの算出方法
APFは、年間を通じたエアコンの使用状況をシミュレーションし、消費電力量を算出して求められます。具体的な算出手順は以下の通りです。
- 年間の総合負荷の算出
使用する建物の用途(「戸建て店舗」や「事務所ビル」など)に応じて年間の冷暖房負荷を算出します。 - 8つの評価点でのエネルギー効率の評価
計算に用いる8つの評価点は、次の通りです- 冷房定格標準
- 中間冷房標準
- 中間冷房中温
- 最小冷房中温
- 暖房定格標準
- 中間暖房標準
- 最小暖房標準
- 最大暖房低温
これらの評価点に基づき、年間を通じた運転効率と総消費電力量を算出し、APFを求めます。より多くの評価点を考慮することで、実際の使用環境に近い形でエネルギー消費効率を評価できます。
4. APF2015の規格と評価ポイント
APF2015では、従来の5点評価からさらに使用実態に即した8点評価へと拡大されました。これにより、従来よりも細かく実際のエアコンの運転状況を評価できるようになっています。
また、APF2015は「JIS B 8616:2015」および「JRA 4002:2016」の規格に基づいており、特にパッケージエアコンディショナーに対しての適用がされています。これらの規格では、業務用エアコンの運転状態や環境条件を細かく設定し、それに基づいた運転効率を評価することが求められています。
5. 業務用エアコンにおけるAPFの適用範囲と対象機種
APF2015の対象となるのは、主に次のような業務用エアコンです。
- 店舗・オフィス用エアコン
- ビル用マルチエアコン
- 設備用エアコン
これらのうち、定格冷房能力が56kW以下の空冷式冷房専用形、および空冷式冷房・暖房兼用(ヒートポンプ)形が対象となります。ただし、特殊用途の機種(冷暖同時運転タイプや水冷式、電算機室用、車両空調用など)はAPFの対象外です。
6. 省エネ法とAPFの役割
省エネルギー法は、エネルギーの効率的な使用を促進するために定められた法律で、業務用エアコンのカタログにはAPF2006の記載が続いています。これは、省エネ法が「JIS B 8616:2006」に基づいているためです。しかし、今後はAPF2015に基づいた省エネ性能の評価が主流となっていくでしょう。
7. COPとAPFの選び方と実践的な省エネ対策
エアコン選びでは、COPだけでなくAPFも考慮することが重要です。たとえば、北海道のような寒冷地では、冬季の運転効率を重視してAPFの高い機種を選定することで、年間を通してエネルギーコストを削減することができます。また、店舗やオフィスビルのような大規模施設では、複数の空調機器の導入により、APFによる年間運転効率の比較が効果的です。
8. まとめ:APFを活用した省エネへの道
APFは、年間を通じてエアコンの運転効率を評価する上で非常に有用な指標です。業務用エアコンを導入する際は、APFの高い製品を選ぶことで、長期的な省エネ効果が期待でき、光熱費の削減にもつながります。株式会社totokaでは、APFの視点を取り入れた最適な省エネ提案を行い、企業のコスト削減をサポートしています。エアコン選定や省エネ対策に関するご相談は、ぜひ当社までお問い合わせください。