2024年4月からすべての介護事業者に対して事業継続計画(BCP)の策定が義務化されました。この取り組みは、地震や台風、感染症の流行といった緊急事態でも利用者の安全を守り、介護サービスを安定的に提供するためのものです。
特に自然災害や停電のリスクが高い北海道では、非常用電源の確保やエネルギー対策が事業の安定運営に直結します。本コラムでは、BCP策定のメリットや具体的な取り組み方に加え、補助金制度や太陽光発電の活用についても詳しく解説します。
目次
- BCPとは?その目的と必要性
- 北海道の介護事業者が直面するリスクとは
- BCP策定の具体的なステップ
- 非常用電源と補助金制度の活用
- 太陽光発電を活用したBCP対策
- BCP策定のメリット:経営の安定と利用者の信頼確保
- BCP策定の支援制度を活用しよう
- BCPを「運用」するためのポイント
- まとめ:北海道事業者がBCPを策定する意義
1. BCPとは?その目的と必要性
**BCP(Business Continuity Plan)**は、自然災害や感染症流行などの緊急事態に直面した際、事業の継続や早期復旧を目指すための計画です。介護事業者においては、利用者の命を守り、サービス提供を中断させないことが最大の目的となります。
北海道は地震や豪雪、台風の影響を受けやすい地域です。そのため、施設運営におけるリスク管理を強化し、BCPを策定することが事業継続の鍵となります。
2. 北海道の介護事業者が直面するリスクとは
北海道ならではのリスクを以下に挙げます。
リスク | 内容 |
---|---|
自然災害 | 地震(2018年の胆振東部地震)、大雪による交通麻痺、台風による停電など。 |
感染症の流行 | インフルエンザや新型コロナウイルスの流行が、介護施設内のクラスター発生につながる可能性。 |
ライフラインの寸断 | 電力・ガス・水道の供給が停止する事態への備えが不十分な場合、利用者の安全に影響が出るリスク。 |
交通障害 | 豪雪や台風による物流や職員の通勤困難。利用者への食事提供や必要物資の配送が滞る恐れ。 |
これらのリスクに備えるためには、BCPが必須です。
3. BCP策定の具体的なステップ
1. リスクの洗い出し
施設周辺で想定される災害や緊急事態を明確化します。北海道特有のリスク(豪雪・停電など)に着目しましょう。
2. 優先業務の特定
利用者の命を守るために最優先で取り組むべき業務(食事・医療ケアなど)をリスト化します。
3. 体制と連絡網の整備
職員や関係者との連絡体制を整備します。非常時に必要な連絡先リストを常に更新しておきましょう。
4. 必要物資の備蓄
食料や水、発電機、燃料、衛生用品など、少なくとも3日分の備蓄を確保してください。
5. 訓練の実施
BCPを実際に機能させるには訓練が欠かせません。避難訓練や初動対応訓練を定期的に実施し、実効性を確認しましょう。
4. 非常用電源と補助金制度の活用
非常用電源の必要性
BCP策定において、非常用電源の確保は欠かせません。北海道では、地震や台風、大雪などによる大規模停電がたびたび発生しており、介護施設においても電力供給の中断は重大な影響を及ぼします。特に医療機器を使用している利用者の安全を守るためには、非常用電源の準備が必須です。
非常用電源に対する補助金制度
政府は、非常用電源の導入を支援するため、以下のような補助金制度を設けています。
認知症高齢者グループホーム等防災改修等支援事業
対象事業所 | 地域密着型特別養護老人ホーム、小規模ケアハウスなど、原則定員29名以下の介護施設 |
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補助率・上限額 | – 補助率:定額補助 – 上限額:1施設あたり1,540万円または773万円(対象施設・設備内容による) |
参照元 | 厚生労働省「令和5年度予算案の概要(老健局)」3ページ |
高齢者施設等の非常用自家発電設備整備等事業
対象事業所 | 特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、養護老人ホーム |
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補助率・上限額 | – 補助率:国2分の1、市4分の1、事業者4分の1 – 上限額:厚生労働省大臣が認めた額 |
参照元 | 内閣府「災害時の拠点等となる医療施設、社会福祉施設の給水設備や非常用自家発電装置の整備」 |
補助金活用のポイント
非常用電源の導入は高額な費用がかかりますが、上記のような補助金を活用することで、費用負担を大幅に軽減できます。導入を検討する際には、設置を依頼する業者と相談しながら、施設に適した補助金が利用可能か調査することをおすすめします。
5. 太陽光発電を活用したBCP対策
太陽光発電システムとは?
太陽光発電システムは、太陽光を電気に変換し、自施設で利用できる発電設備です。蓄電池と組み合わせることで、夜間や悪天候時にも安定して電力を供給できます。
メリット | デメリット |
---|---|
屋根や屋上に設置でき、敷地の有効活用が可能 | 設置後に移動が困難 |
蓄電池と組み合わせることで夜間や消費電力の多い時間帯にも自家消費可能 | 天候や時間帯により発電量が変動 |
平常時も電気代削減に役立つため、10年程度で初期費用を回収可能 | 定期的な清掃やメンテナンスが必要 |
PPAモデルを活用した初期費用0円の導入
太陽光発電は、高額な初期費用がかかる印象がありますが、近年注目されている「PPAモデル」を活用することで初期費用0円で導入可能です。
PPAモデルとは?
PPA(Power Purchase Agreement)モデルでは、PPA事業者が自社の屋根や敷地に太陽光発電設備を無償で設置し、契約期間中の維持管理も事業者側が負担します。発電された電力は自社で使用できるため、非常用電源としての役割を果たしながら、平常時の電気代削減にもつながります。
特長 |
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初期費用0円で太陽光発電を導入可能 |
契約期間中の維持管理や保守点検費用をPPA事業者が負担 |
平常時の電気代削減と非常時のバックアップ電源としての利用が可能 |
6. BCP策定のメリット:経営の安定と利用者の信頼確保
BCPを策定することで得られる主なメリットは以下の通りです。
- 利用者・職員の安全確保
緊急時でも安心してサービスを提供できる体制が整います。 - 経営面での安定
事業の中断による損失を最小限に抑えることが可能です。 - 信頼の向上
利用者やその家族から「信頼できる施設」として高評価を得られます。
また、BCP未策定の場合、介護報酬が減算されるリスクがあるため、早めの取り組みが必要です。
7. BCP策定の支援制度を活用しよう
北海道の介護事業者は、BCP策定に関する以下の支援制度を活用することで、負担を軽減できます。
支援内容 | 詳細 |
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補助金・助成金 | 災害対策備品の購入費用や、BCP策定支援のコンサルティング費用に活用できる助成金があります。 |
税制優遇 | 一部の災害対策設備投資が税制上の優遇措置を受けることが可能です。 |
自治体による無料セミナー | 北海道内の自治体が提供するBCP策定セミナーやワークショップに参加することで、具体的なノウハウを習得できます。 |
これらの制度を積極的に利用し、負担を軽減しながら計画を進めましょう。
8. BCPを「運用」するためのポイント
BCP策定後は、それを「形骸化させない」ための運用が重要です。
- 定期的な見直し
施設の状況や最新のリスク情報に合わせて計画を更新します。 - 教育と訓練の継続
職員全員がBCPの内容を理解し、緊急時に対応できるように訓練を実施しましょう。 - 他施設との連携強化
地域の他施設や自治体、医療機関と協力体制を築くことで、緊急時の対応力が向上します。
9. まとめ:北海道事業者がBCPを策定する意義
北海道の自然環境や災害リスクを踏まえると、BCPの策定は避けられない課題です。
totokaでは、業務提携先と事業者と北海道の介護事業者様がBCPを策定するためのサポートを行っています。専門家によるアドバイスや補助金申請のサポートも可能です。