北海道でも実現が可能か!?火力発電所でアンモニアを混焼することでCO₂が減少する仕組みとは?

導入文

近年、脱炭素社会への移行が世界的な課題となる中、二酸化炭素(CO₂)排出量の削減が求められています。日本も例外ではなく、特に電力部門における脱炭素化が重要なテーマとして挙げられています。そのような中、火力発電において「アンモニア混焼技術」が注目を集めています。この技術は既存の発電設備を活用しながら、CO₂排出量を大幅に削減できる可能性を秘めています。本記事では、アンモニア混焼技術の仕組み、メリット・デメリット、そして北海道のような寒冷地での実現性について詳しく解説します。


目次

  1. アンモニアとは何か?
    • アンモニアの基本特性
    • 利用用途と生産状況
  2. アンモニア混焼の仕組み
    • 火力発電でのアンモニア利用方法
    • CO₂削減効果の具体例
  3. アンモニア混焼技術のメリット
    • 脱炭素への寄与
    • 既存設備の活用
    • 水素キャリアとしての可能性
  4. 課題と克服の道
    • サプライチェーンの確立
    • 製造過程でのCO₂排出問題
    • コスト面の課題
  5. 北海道での導入可能性
    • 地域特性とアンモニア活用
    • 他地域での事例から学ぶポイント
  6. まとめと次へのステップ

1. アンモニアとは何か?

アンモニアの基本特性

アンモニア(NH₃)は、窒素と水素から成る化合物で、無色透明の気体として存在します。その強い刺激臭から有毒物質としてのイメージが強い一方、液化が容易で扱いやすい性質を持ちます。

利用用途と生産状況

アンモニアは主に以下の用途で利用されています。

用途割合
肥料(窒素肥料)約80%
化学製品(ナイロン等)約15%
その他(エネルギー等)約5%

また、日本では国内生産と輸入で需要を賄っていますが、燃料用途としては未開拓の部分が多く、今後の市場成長が期待されています。


2. アンモニア混焼の仕組み

火力発電でのアンモニア利用方法

火力発電におけるアンモニア利用は、大きく分けて「混焼」と「専焼」の2つがあります。
混焼では、既存の石炭や天然ガスとアンモニアを組み合わせて燃焼させ、CO₂排出量を削減します。一方、専焼はアンモニアのみを燃料とする方法ですが、技術やコストの課題が多いため、現時点では混焼が主流です。


CO₂削減効果の具体例

政府の試算によれば、国内の全石炭火力発電所で20%のアンモニア混焼を実施した場合、約4,000万トンのCO₂削減が見込まれています。これは、日本の電力部門の年間CO₂排出量の約10%に相当します。


3. アンモニア混焼技術のメリット

脱炭素への寄与

アンモニアは燃焼してもCO₂を排出しないため、火力発電の脱炭素化において画期的な選択肢です。特に安定した電力供給が求められる状況下で再エネを補完する役割を果たします。

既存設備の活用

既存の火力発電設備を改修するだけで利用可能なため、新たな大規模投資を抑えられます。これは導入のハードルを下げる大きなポイントです。


4. 課題と克服の道

サプライチェーンの確立

アンモニア混焼を実現するには、安定した燃料供給体制が必要です。しかし、現状では燃料用アンモニアの世界生産量が需要に追いついていません。国内外での生産能力向上が急務です。

製造過程でのCO₂排出問題

現在の主流製造法(ハーバー・ボッシュ法)は、化石燃料を用いるため、製造時に多くのCO₂が排出されます。この課題を克服するため、再生可能エネルギーを活用した「グリーンアンモニア」の製造が注目されています。

コスト面での課題

アンモニア混焼技術は魅力的ですが、現状ではコストが高いことが大きな課題です。

  • 燃料コストの高さ
    アンモニアの製造コストは石炭や天然ガスと比べて高く、特に現段階では、20%のアンモニア混焼でも発電コストが石炭火力の約1.2倍になるとされています。専焼に移行すれば、このコスト差はさらに拡大します。
  • 価格高騰のリスク
    燃料としてのアンモニア需要が急増した場合、供給不足により価格が高騰する可能性があります。これにより、肥料価格の上昇や農業分野への影響が懸念されています。
  • 設備改修コスト
    既存の火力発電設備を活用する際も、バーナーや燃焼制御システムの改修が必要です。これらの初期投資は特に中小の発電事業者にとって負担となる可能性があります。

5. 北海道での導入可能性

地域特性とアンモニア活用

北海道は寒冷地特有のエネルギー需要が高く、安定供給が求められる地域です。また、農業が盛んなため、アンモニアの主要用途である肥料とのシナジー効果も期待できます。


6. まとめ

アンモニア混焼技術は、北海道における安定的な電力供給と脱炭素化を同時に実現する可能性を秘めています。しかし、燃料供給やコストの課題を克服する必要があります。特に「グリーンアンモニア」の普及や国内外でのサプライチェーン整備が鍵を握ります。

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