「常時バックアップ」とは、新電力が電力を供給する際に、旧一般電気事業者から継続的に電力を購入する制度です。2016年4月1日の電力小売自由化以降、このシステムが重要になりました。
常時バックアップの目的
新電力が電力市場に参入する際、自社の発電所からの供給だけでは不足することがあります。旧一般電気事業者からの電力購入は、新電力が市場に参入する障壁を低減します。
基本用語解説
- 旧一般電気事業者とは: 北海道電力、東北電力、東京電力など、地域に基づいて発電、送配電、小売を行ってきた企業。
- ベース電源とは: 一定量の電力を安定して供給する源。例えば、化石燃料による火力発電、流れ込み式水力発電、地熱発電、原子力発電など。
常時バックアップの形態
部分供給は常時バックアップと仕組みが異なります。違いは以下の通りです。
- 常時バックアップ: 旧一般電気事業者からの一定量の電力を新電力が仕入れ、消費者に供給。
- 部分供給: 新電力と旧一般電気事業者の両方から消費者への供給が行われる。
法的側面
- 電気事業法では具体的な規制はないが、「適正な電力取引についての指針」で、常時バックアップが確保されるよう配慮が求められています。
- 特定の小売電気事業者への常時バックアップの拒否や供給量の不当な制限は、独占禁止法上違法となる可能性があります。
常時バックアップの仕組み
市場での取引ではなくあくまで相対取引のような形になるため、常時BUを利用したい場合は新電力側から旧一般電気事業者にコンタクトを取り契約を行う必要があります。
北海道電力のみ常時バックアップ廃止の理由
監視委員会は2023年6月27日に第86回制度設計専門会合を開催し、大手電力会社による国内外の取引先に対する平等な卸売りの実施状況に関する評価結果を発表しました。
この会合において、監視委員会は大手電力会社の中で、北海道電力が国内外の取引先に対して差別なく卸売りを実施しているという評価を下しました。
なぜ内外無差別の評価を得られたのか
2023年度の取引分から、北海道電力は、東京・渋谷に拠点を置く電力ブローカー、enechainのプラットフォームを用いて、卸電力の全量を取引する新しい方式に移行いたしました。北海道電力の売り注文や成約実績はリアルタイムで公開され、価格やその他の条件は、量に関係なく、自社の小売部門と他の新電力会社で同一です。この取引方法は監視委員会によって「国内外での差別のない取引が保証されている」と評価されました。
JBU(常時バックアップ)は、2000年の電力部分自由化の際に、新たに市場に参入した新電力会社を支援するために導入された制度です。大手電力会社による国内外での差別のない卸売りが保証されると、新電力の電源調達を支援する必要がなくなると考えられます。
地域電力各社の見通し
- 常時バックアップは、自由な卸取引に代わって廃止される予定です。現時点では卸電力取引量が少ないため、当面は継続されますが、最終的には卸市場の活性化とともに廃止される見込みです。
このシステムの廃止は、電力市場の更なる自由化と競争促進を目指していることを示しています。新電力企業の独自の発電能力の強化や、卸電力市場の発展により、将来的には電力供給の多様化と効率化が期待されます。